MBA留学準備ガイダンス(第1回)

MBAの概要

1:MBAとは?

MBA(Master of Business Administration:経営学修士)は、大学院の学位です。ビジネススクールのMBAプログラムを修了すると取得することができます。

2:ビジネススクールとは?

ビジネススクールは、将来のリーダーを育成する高等教育機関です。歴史的には、1881年に設立されたUniversity of PennsylvaniaのWharton School(米国)が世界最古のビジネススクールといわれています。そして、1908年に設立されたHarvard UniversityのHarvard Business School(米国)が世界で最初にMBAプログラムを提供したといわれています。

ビジネススクールは、北米、ヨーロッパ、アジアなど、世界の様々な地域にあります。たとえば、北米には、Stanford UniversityのStanford Graduate School of Business(米国)、ヨーロッパには、University of CambridgeのCambridge Judge Business School(英国)、アジアには、Nanyang Technological UniversityのNanyang Business School(シンガポール)があります。INSEAD(フランス、シンガポール、アラブ首長国連邦)のように、複数の国にキャンパスのあるビジネススクールもあります。

ビジネススクールには、大学を起源とするビジネススクール、企業の研修所を起源とするビジネススクール、起業家による設立を起源とするビジネススクールがあります。たとえば、大学を起源とするビジネススクールにはUniversity of ChicagoのBooth School of Business(米国)、企業の研修施設を起源とするビジネススクールにはIMD Business School(スイス)、起業家による設立を起源とするビジネススクールにはIE Business School(スペイン)があります。

ビジネススクールの品質の目安として、国際認証機関による認証があります。AACSB(米国)、EQUIS(ベルギー)、AMBA(英国)は、3大認証機関といわれています。3つの認証を受けているビジネススクールはトリプルクラウンといわれており、University of ManchesterのAlliance Manchester Business School(英国)、HEC Paris(フランス)、Vlerick Business School(ベルギー)などがあります。

また、ビジネススクールのベンチマークとして、ランキングがあります。Financial Times(英国)、Economist(英国)、Bloomberg Businessweek(米国)、Forbes(米国)、U.S. News & World Report(米国)などが独自の基準でランキングを算出しています。

3:MBAプログラムとは?

MBAプログラムは、修了するとMBAの学位が発行されるプログラムです。複数の大学院やプログラムで学ぶことにより、1枚の学位記を取得できるJoint Degreeプログラムや複数の学位記を取得できるDual Degreeプログラムもあります。

通常のMBAプログラムの他に、エグゼクティブを対象とするExecutive MBAプログラム(EMBAプログラム)もあります。

MBAプログラムには、全日制のFull-Time MBAプログラムの他に、夜間や週末に参加できるPart-Time MBAプログラムがあります。遠隔教育スタイルのOnline MBAプログラムもあります。

期間は、MBAプログラムにより異なりますが、米国は2年、ヨーロッパとアジアは1年から1.5年のMBAプログラムが多い傾向があります。たとえば、University of California, Los AngelesのAnderson School of Management(米国)のMBAプログラムは2年、EMLYON Business School(フランス)のMBAプログラムは1年、National University of SingaporeのNUS Business School(シンガポール)のMBAプログラムは17ヵ月です。

入学時期は、MBAプログラムにより異なりますが、世界的に9月頃の入学が多い傾向がありますが、1月頃の入学などもあります。たとえば、Ramon Llull UniversityのESADE Business School(スペイン)のMBAプログラムは9月入学、Erasmus UniversityのRotterdam School of Management(オランダ)のMBAプログラムは1月入学です。York UniversityのSchulich School of Business(カナダ)のように、1年に2回の入学(9月入学と1月入学)があるMBAプログラムもあります。

4:MBAプログラムの構成

MBAプログラムは、必修科目と選択科目から構成されており、必修科目で幅広くゼネラルマネジメント、選択科目で専門分野について深く学習する機会があります。

ゼネラルマネジメントとは経営全般のことで、社員のこと(人材管理)、お客さんのこと(マーケティング)、お金のこと(会計、ファイナンス)、製品やサービスのこと(オペレーション、調達)、情報のこと(情報管理)、法律のこと(法務)、経営方針のこと(経営戦略)などから構成されています。このように、経営全般について学ぶことが出来るので、様々な分野の専門家の皆さんと一緒にコラボレーションしながら仕事を進める際に、共通言語でコミュニケーションをとることが出来るようになります。

専門分野に関しては、自分の関心に応じて、スキル、業界、地域という観点から選択することができます。スキルの観点からは、人材管理、ファイナンス、マーケティングなど、特定分野について深く学ぶことができます。また、業界の観点からは、ヘルスケア、不動産、エンターテインメントなどの業界に特化した知見を深めることができます。更に、地域の観点からは、国際ビジネス、新興国ビジネス、アジアビジネスなど、ビジネススクールのキャンパス内外での様々な機会を通して、視野を広げることができます。

MBAプログラムの興味深い点は、リーダーシップや異文化間コミュニケーションなどのソフトスキルを伸ばすことが出来ることです。チーム活動の機会が豊富にあり、業界、専門分野、出身地域などが異なるチームの仲間たちと協力しながら、チームとしての成果を出すことができるようになります。また、バックグラウンドの異なるチームの仲間たちから学んだり、自分の得意分野をチームの仲間たちに教えたりすることを通してチーム活動の相乗効果を図ることができるようになります。チーム活動を通して、グローバルリーダーとして必要なリーダーシップのスキルを習得することができます。

MBAプログラムは、授業などのカリキュラムに沿った機会だけではなく、クラブ活動などの課外活動の機会もあります。ジャパンクラブなど文化交流を目的とするクラブ、コンサルティングクラブなど就職活動を目的とするクラブ、スポーツクラブなど趣味を目的とするクラブなど、多種多様なクラブがあり、ネットワークを構築する機会が豊富にあります。

MBAプログラムでは、新しい価値を創造することアントレプレナーシップ(起業家精神)が重視されています。アントレプレナーシップに関連する科目のみならず、ビジネスプランコンテスト、新商品開発プロジェクトなどの機会があり、0から1を創造するために、アイデアを形にすることを学んだり体験したりする機会があります。

国際経験にも力を入れており、提携校との交換留学プログラムを活用することにより、2ヵ国以上のキャンパスで学ぶことができます。また、コンサルティングプロジェクトやスタディツアーなど、様々な国を訪問する機会もあります。

5:MBAプログラムの教授法

MBAプログラムで採用されている教授法には、ケーススタディ(事例研究)、プロジェクト(体験学習)、レクチャー(講義)などがあります。ケーススタディ、プロジェクト、レクチャーをバランス良く採用しているビジネススクール(バランス型)から、ケーススタディの割合が高いビジネススクール(ケース重視型)まで、ビジネススクールにより教授法の割合は異なります。たとえば、バランス型のビジネススクールにはCornell UniversityのJohnson School of Management(米国)、ケース重視型のビジネススクールにはUniversity of NavarraのIESE Business School(スペイン)があります。

ケーススタディは、ビジネスの事例に関するストーリーを読むことにより、経営者の立場からの意思決定を疑似体験できる機会です。結果はストーリーに書かれていないので、ストーリーに記載されている情報に基づいて論理的な意思決定を行うことが期待されています。様々なケーススタディを体験することにより、自分の頭の中に意思決定のデータベースを構築することができます。

プロジェクトは、現場でビジネスを体験することにより、当事者として課題解決の疑似体験をすることができる機会です。コンサルティングプロジェクトや新商品開発プロジェクトなど、具体的な成果を実現するために、ビジネスに関する知識やスキルを活用して課題を解決することが期待されています。また、チームとしての目標を達成するため、チームの仲間たちと協力したり、リーダーシップを発揮したりすることも求められています。チームプロジェクトを体験することにより、実際に課題を解決する経験値を高めることができます。

レクチャーは、ビジネスに関する理論を体系的に習得する機会です。教授の説明を聞くことを通して、理論を正しく習得することが期待されています。レクチャーにより理論に関する知識を増やすことにより、論理的に考えるための知識基盤を構築できるようになります。